12月5日にオンラインで開催された「脱原発をめざす女たちの会」12・5集会の報告です。

当日の記録動画は、YouTubeでご覧になれます。以下より、ご視聴ください。

https://youtu.be/0KS8deWz7FQ


<「脱原発をめざす女たちの会」12・5集会報告>

2021年12月5日、「脱原発をめざす女たちの会」は、10年目の企画として「いまこそ脱原発!! 止めよう 汚染水の海洋放出! 止めよう 原発再稼働!」のオンライン集会を行いました。たたかいの現場からの5人の方の報告、国政の現場からの2人の議員の決意表明が行われ、集会に参加してくださったのは約90名でした。

福島の事故から10年が経過して、人々が関心を示せる場が少なくなり、メディアもとりあげなくなってきていますが、各地で地道にしぶとくたたかっている方々のご報告に、改めて一人一人ががんばっていかなければならないと感じさせられた集会でした。以下、概要をご報告します。

1.おしどりマコさん:原発事故が続いて10年・設備も組織も劣化した東京電力

福島原発事故を取材して10年になりますが、事故直後よりも今は残念なことが多いです。設備も劣化していますが、人が劣化しています。そもそも人々の関心が薄れてメディアの取材も減りました。設備で言えば、当初は7年の予定の仮設備だった凍土壁がいまだにそのままで、漏えいや固着(さびつき)が増加しています。それから現場の作業員の劣化ですが、事故当初は新人のヒューマンエラーが多かったものが、今は現場責任者や元請業者のミスやルール軽視が増え、現場のこうした劣化は内部被曝につながっています。

処理水の海洋放出については、東電は規制庁に処理の実施計画を出していないにもかかわらず、実施計画を出すには当たらないとして先月末に放出のための工事を開始する、風評被害払拭のために希釈水での魚介類飼育実験を「科学的な飼育実験ではない飼育だ」と称してオンラインで中継するなど、既成事実をどんどん作っている状況です。

こうした取材をしていて、国民はほんとうになめられていると感じます。原発事故関連の訴訟で、国や東電の責任はある程度認められても、被害者の損害賠償は認められていません。被害の調査がきちんとされていないからです。福島県の県民健康調査検討委員会では、委員の一人は環境省の環境保健部長ですが「公害のノウハウを活用」したいと言う。その環境省は、水俣病などの公害対応では加害者側に立ってどれほどひどいことをしてきたでしょうか。訴訟でいえば、原告の調査を被告側に立ってやっているようなものです。このような状況なので、損害論については、なかなかいい判決が出ないと思っています。

わたしたちおしどりコンビは、福島事故で脱原発に舵を切った最初の国ドイツにも行って脱原発の政策の現状を見てきました。脱原発が進んだのは、メルケルの指導力ではなく、福島事故の後の選挙での緑の党の圧勝をもたらした市民団体の力によるものです。脱原発が定まった今、市民団体は、廃炉後の放射性廃棄物監視システムを作っていますし、ドイツはベルギーやスイスなど他の国にも脱原発を働きかけています。また、市民が普段から脱原発の話をしています。脱原発に詳しい高校生に話を聞きましたら、その高校生が9歳の時に福島事故があり、母親にテレビでのその報道を、一緒に見なさい、こわくてもこれからの判断材料になることだからしっかり見るように、と言われたとのことでした。家族で話をして原発のことを知っている学生がドイツにはとても多かったです。私たちもそのように、自分の半径5メートルから変えていきましょう。

2.野村保子さん:大間原発と寿都を止めて核燃サイクルの終焉を

本日は「大間とわたしたち・未来につながる会」の代表として参加しました。

昨年8月北海道寿都町の町長は高レベル放射性廃棄物最終処分場選定の文献調査に応募を表明しました。これに対し、町民は撤回要求署名や、住民投票条例制定請求をしましたが、町長は議会を非公開にして請求を否決しました。同時に泊原発を挟んで寿都の向かい側にある神恵内村が文献調査に応募して、11月には経産省が両町村の文献調査実施を認可し、10万年のお守りが必要な核ゴミ問題が3ヶ月で決定されてしまったのです。

寿都も神恵内も本州の外れです。原発も都市から離れて建設されますが、核のゴミもまた過疎地に埋め捨てになっています。寿都には大間原発で燃やしたMOX燃料の残りが埋められる予定です。MOX燃料を使って核燃サイクルができるというのは破綻して幻の技術となり、大間原発のMOX燃料の再処理は日本ではできないというのが現状です。大間は函館からフェリーで90分、原発の周囲3キロ以内に町の機能が集まっています。2010年に起こされた大間原発建設中止の訴訟は函館地裁で却下され、現在札幌高裁で控訴審の最中です。2014年には函館市長も大間原発建設の差し止めを求めて国と電源開発を提訴しました。

大間原発は世界初のフルMOX原発ですが、その危険性から世界では開発は中止となっています。炉の構造もシステム的に欠陥がある、原発敷地内に人家がある、電源開発は原発建設の経験はない、津軽海峡はテロの標的となる国際海峡である、温排水の危険がある、活断層に囲まれているなど、問題ばかりです。けれど、大間と寿都は、日本の原発サイトに満杯となっている使用済み燃料の処理施設として必要とされています。過疎の町の寿都は高レベル放射性廃棄物の処分場と考えられていますが、事故や災害にどう対応するのでしょうか、10万年も誰が責任を持てるのでしょうか。輸送でさえ、熱と放射能で輸送車両の汚染が問題となっています。

交付金の魅力が言われていますが、第一段階では2年間で最大20億円の文献調査費、第二段階では4年間で最大70億円の概要調査費が支払われることになってます。その後、精密調査には14年かかると言われていますが、その交付金がどうなるかは未定です。このような交付金に比較して、北海道の第一次産業の年間生産高を調べてみましたが、約12,762億円と桁違いの価値があります。この日本最大の食糧基地を、核のゴミ捨て場にしてはいけません。

寿都では町民が子供たちに核のない寿都をと活動しています。おしどりマコさんが劣化と表現された、そうした劣化した核燃サイクルを推進する人々が、北海道、そして日本全体を狙っています。今からでも遅くない、一人が一人に伝えて変えていけると私は信じています。

3.武藤類子さん:福島でいま起こっていること

今日は5つの問題についてお話しします。最初は刑事裁判の問題です。今年の11月2日から東京高裁での控訴審が始まりました。300人の集まった事前集会では5人の方が遺影での参加でした。そういう時間が過ぎたのです。審理ではまずこちらの指定弁護士が地裁判決の4つの誤りを指摘し、3人の証人尋問と現場検証を請求し、来年2月9日の公判で裁判官が請求への判断を示すことになっています。

2番目は避難者の住宅問題についてです。避難指示が次々に解除されて2017年から福島県は避難者への住宅無償提供の打ち切りを実施し、今年には国家公務員宿舎入居世帯に退去通告をしています。経済的・精神的に弱い立場にある方々をどんどん追いつめている状況です。

もう一つは健康被害の問題です。いまだに甲状腺がん患者などの正確な人数把握はなされず、検査の縮小論が出ています。事故当時は子どもであった甲状腺がんの当事者たちが声をあげはじめ、早期発見・早期治療が有効であると述べて、検査の継続を望んでいます。彼らの声は「原発事故から10年 いま、当事者の声をきく ―甲状腺がん当事者アンケート105人の声―」という冊子にまとめられており、ウェブサイトでもごらんになれます。また、災害に関連しては自死や孤独死、そしてがん以外にも、白血病や、更に精神的被害を受けている人も多くなっています。

次に、国や県は2014年からの「福島イノベーションコースト構想」で大きな箱モノをどんどん作り、新たな村興しを提唱していますが、これは原子力村興しではないでしょうか。また、その構想の司令塔になる国際教育研究拠点をアメリカのハンフォード(長崎に投下された原爆の材料の工場があった)にならって作ると言っていますが、原発関連施設を広大な隔離用地内に作り、住民の生活地域はその外であったハンフォードと福島は全く異なっています。こうした構想は、被災者の望む地域復興とはかけ離れたものであり、住民のための建設と宣伝されている大熊町も陸の孤島のようで、被災者は実際には常におきざりになっています。

最後に、政府はこうした形の復興を、電通などを300億円にものぼる巨額の経費で動員した宣伝と広告で喧伝して世論操作しています。過去を振り返らせないような復興を推進し、事故被害者を切り捨て、事故の責任をあいまいにし、原子力の復権をめざしていると思います。

これが現在の福島のやりきれない姿ですが、このような地域をこれ以上作ってはならないと思います。原発を止めてゆきましょう、一緒にがんばりましょう。

4.大河陽子さん:東海第二原発差し止め判決の意義

今年2021年3月18日の水戸地裁の「東海第二原発運転差止判決」、これは原発運転差し止め訴訟で、はじめて避難計画の不備を理由に運転を差し止めた画期的なものでした。

東海第二原発は東京駅まで116キロの位置にある首都圏原発というべきもので、半径30km県内に水戸市・日立市・ひたちなか市など94万人強の住む人口密集地にあります。判決は、1.事故があれば被害は甚大となると福島の実態にもとづいて被害を認定、2.事故収束は他の施設と比較にならないほど困難であることが予想されること、3.事故の原因となる自然災害の予測は現在の科学技術の水準では確実に行えないこと、4.こうした条件下で原発の安全確保のためには深層防護が有効である、5.法令にも規定されているこの防護レベルで、特に第5の防護レベルの避難計画が実施可能な計画・体制を伴って策定されていることが必要、6.けれども本件ではそうした計画策定・体制整備からはほど遠い状態である、との判断でした。実際に、避難計画を策定しているのは14市町村のうち、相対的に小規模な5自治体にとどまり、それも実行可能性からはほど遠いものであることが示され、運転差し止めが認められました。

おそらく、全国でも避難計画については東海第二と同じような原発が多いと思われます。

全国に波及する重要なこの判決を、是非、皆さんも広めてください。

5.アイリーン美緒子スミスさん:若狭の原発をなぜ止めないといけないのか

世界の中で日本は地震の震源地数と原発立地数が最も多く重なっている国で、その日本の中で福井県は、美浜3基、もんじゅ、敦賀2基、大飯4基、高浜4基と最も原発が密集している地域です。止まっている原発もありますが、使用済み燃料が大量に置いてあって危険な状況です。老朽原発を認可して動かそうとすることも、まず若狭から止めていかないとなりません。

若狭湾は断層だらけで、敦賀では真下に断層が走っています。また、火山の問題もあります。大山からは過去に火山灰が大量に降下した痕跡も残っていますが、こうした火山の問題への対策はなされていません。そして、若狭の大きな問題として、通常のウランではなく、プルトニウムを燃やしています。プルトニウムを加えたMOX燃料は事故が起きるとウランの倍のがん死を引き起こすとの試算があります。フランスから買っていますが質にも大きな問題があることがわかりました。MOX燃料は使用後も温度が下がりません。関西の水がめである琵琶湖には若狭湾から水が流入していますし、事故があれば大阪・京都などへの被害ははかりしれません。それなのに、避難訓練では、自衛隊は防護マスクでも、住民・小学生はマスクだけです。

大飯原発では敷地内に活断層が走っていると思われますが、その調査はされないままになっています。けれども市民は運転差し止め訴訟を起こし、昨年12月に大阪地裁で勝訴しました。私は美浜の会の小山英之さんと訴訟の共同代表をしており、現在は控訴審にかかっていますが、① 福島の事故に学べ、② 大事故の時の汚染水の問題、③ 敷地内の断層、について争っています。これまでのみなさんのご報告を聞いていると、すべてつながっていると思います。福島の事故をきちんとしなければ、また、次の事故が起きるでしょう。この福井の現場ではMOX燃料を止めれば大間の問題にもつながれるし、ここでがんばらなければいけないと思います。武藤さんのふれていらした国際教育研究も、市民の側に立った研究が必要でしょうし、市民ががんばっていければと思います。

次に、国政の現場からお二人に発言を頂きました。

6.大河原雅子さん(立憲民主党衆議院議員)

福島の事故からもう10年が経つと思いますと、解決の遠さに胸が痛みます。

今回の衆議院選挙では、私は脳出血の後、車椅子での選挙戦となりましたが、二期目の活動を始めることができましたので、このチャンスを必ず活かしていこうと思います。立憲民主党は結党の当初から原発に依存しない社会を作ると約束してできた党です。みんなで作った原発ゼロ法案もたな晒しのまま、原発が必要との刷り込み・幻想が再びふりまかれています。この逆戻りを、半径5メートルから一人一人が変えていきましょう。

福島についても、健康被害はとりわけ気になっています。また、最近は地震も続いて不安を感じている方も多いでしょう。世界に大変大きな影響を及ぼした福島過酷事故、これを被害当事国の私達が無視していることは最悪の思考停止です。立憲民主党は、今回、新体制で再起動しましたが、原点に戻って、日本のとるべき中長期エネルギー政策を作るために働きたいと思います。改めて脱原発、禁原発に注力してゆきます。

7.福島みずほさん(社会民主党参議院議員)

政府か国会かのいずれかで脱原発の意思決定に舵を切れるようにしてゆきたいと思います。ドイツでは赤・緑・黄の連立で脱炭素の前倒しを進めることになり、社民党も脱原発・脱炭素・省エネ・再生エネルギーを言っていますが、岸田内閣は逆に原発推進を全面的に出す内閣になっていて、危機感を持っています。近未来で再び日本に事故を起こすことがあってはなりません。そのために、三点の取組を考えています。

第一は自治体での活動です。福井県庁には知事に原発依存反対の申し入れをしました。自治体で、地元と協力・対話し、変えるきっかけを作ってゆきましょう。

第二は国会の中での質問や交渉です。柏崎刈羽での不祥事や、これは10年目になってわかったことですが、福島でベントのトンネルがつながっていなかったこと、震度計が設置されていなかったことなど、さまざまな問題が質問や交渉で判明してきました。避難者の住居の打ち切り問題も訴訟だけでなく、知恵を出してゆくことが必要です。

第三は、裁判の支援です。訴訟を支援しつつ、そこで役に立つものを国会で活かしていきたいと思っています。全国のさまざまな訴訟で得たことを国会に還流してしっかり質問してゆきたいと思っています。

こうしたことに取り組みつつ、ドイツなどにならって、日本の政治も変えてゆきましょう。