2023年6月29日 脱原発をめざす女たちの会 オンライン講演会
 「原発推進を止めよう! GX法の問題点とこども甲状腺がん裁判が問いかけるもの」

久しぶりの「脱原発をめざす女たちの会」の企画です。今国会ではGX束ね法案が通り、あれだけの事故の後に老朽原発を動かすなどどんでもない、できることをやってゆきたい、と計画しました。まず、最初に福島みずほさんから国会報告がありました。

<福島みずほ参議院議員:国会報告>
今国会は次々と悪法が通りました。安倍内閣もひどかったですが、淡々と悪法を通してゆく岸田内閣はその10倍ひどいと思います。司会からも報告されましたが、GX,つまりグリーン・トランスフォーメーションの指針をもとに原発推進関連法案が成立しました。これは原発も脱炭素だとして、国債を発行してお金をつぎ込むとんでもないものです。東日本大震災後に細野大臣が原発の使用期限は40年、延長しても20年と決定して、それ以降、一応は政府方針も脱原発であったものをくつがえし、何度でも稼働延長ができるものとしました。今国会は、軍拡をめざして民間企業の国有化ができるという防衛軍需産業強化法が通り、また、人の命を紙切れのように扱う入管法も通りました。人の命を考えない政権を倒して未来を取り戻しましょう。

以下、講演です。(この講演を記録したYouTube動画はこちらhttps://youtu.be/f7a7SyBRcR8からご覧になれます。)

<海渡雄一弁護士:講演>
--- 最初に、こども甲状腺がん裁判での最年少原告の意見陳述が流れました。小学校入学前に事故にあい、それ以来の避難生活の中で将来に大きな不安を抱える暮らしの訴えです。---

この陳述の方は不安の中にいましたが、裁判の中で原告どうし助け合うようになり、いくらか明るい表情も見えてきてはいます。
今日は、5つの順番でお話をします。
はじめに、ドイツでは今年2023年に脱原発が実現しました。保守的だったメルケル首相が福島原発事故以降、ドイツ倫理委員会に検討を依頼し、それまで時期尚早と言われていた脱原発が進んだのですが、なぜ、日本ではそれができないのでしょうか。日本の裁判所はなぜ福島原発事故を未然に防げなかったのでしょうか。以下、原発を巡っての現在の日本の裁判の状況をお話しします。
第一に、原発は深刻な災害を引き起こすという判断を示した1992年の伊方判決は意義あるものでしたが、その後に、最高裁は2005年のもんじゅ、2009年の柏崎と、高裁の事実認定をくつがえした2件の問題ある判決を出しました。そして、2022.6.17最高裁判決は3対1で国の責任を否定しましたが、多数意見の裁判官はそれぞれ、東電と利害関係のある大手弁護士事務所の出身者でした。このときの少数意見、それから2022.7.13株主代表訴訟判決は、2002年に出た推本(地震調査研究推進本部)の長期評価、つまり、当時の学会代表メンバーが、過去の大地震の分析から今後も大地震が起きる可能性を一致して予見した評価を踏まえていますが、多数意見はこの評価や、震災当時と以降の深刻な関連死亡などを無視したものです。東電上層部も、この評価をきちんと受け止めず、経営的にマイナスであるとして対策を先送りしていました。
第二に、震災の直前から直後にかけて起こっていた重要なことです。2011年3月9日に推本の長期評価の改訂版の公表が予定されていました。これは第一版よりも古い時代に遡った調査をし、それまでは弱かった津波の警告がされています。この内容と、その結果としての早期の津波対策の必要性は東電にも伝わっていたのですが、東電上層部は知らなかったと否定し、さらに東電などの要望で公表は3月から4月に延期されました。当初予定通りに公表されていたら、津波は「想定外」とはならなかったはずです。東京地裁判決では、東電役員に安全意識や責任感が根本的に欠如していたと指摘されています。
第三に、原発GX法案ですが、これは3.11後の原子力政策を根本的に覆しました。エネルギー政策として間違っているだけでなく、軍事攻撃目標となる原発の維持は国防政策としても間違っています。また、原発の新増設だけでなく、ナトリウム炉を作ること、福島事故の反省で規制と推進を分離したのに、逆戻りさせて経済産業省が運転期間判断の権限を持つとするなど、大きな問題があります。内容もよくわからないまま通ってしまった法案ですが、今でも国民の大多数は脱原発をのぞんでいるはずです。
第四に、こども甲状腺がん裁判のお話をします。2022年1月に6人(現在は7人)の若者が起こした初の健康被害訴訟ですが、なぜそれまで起こせなかったのかといえば、復興の妨げになるとか、風評加害である、と言われていたからです。けれど、7年前に患者会ができてそこから運動が始まりました。原告の意見陳述はYoutubeにもありますので、ぜひ聴いてください。福島の甲状腺がんは東電の主張するような過剰診療ではありません。福島での発症は通常の発症率より高く、また福島以外の近隣地域でみつかる甲状腺がんは、検診がなくて発見が遅れるために重症化する例が多いのです。そもそも小児甲状腺がんは生命にかかわる重い病気です。裁判での原告の主張は、福島での発症率の高さ、発症の原因が被曝であること、原告は相当の被曝をしたこと、です。国側は被曝量を過小評価していますが、被曝は呼吸からだけでなく、食物からもあるのです。22年5月に第一回の口頭弁論がありましたが、弁護団が疫学的手法で算出した結果は、放射能が原因である確率は94.9%から99.3%と、極めて高いものでした。この裁判の原告だけでなく、福島事故による健康被害を受けている住民の医療と生活を補償する恒常的な制度が必要です。
最後、第五に汚染処理水の問題です。汚染処理水の排出は、2015年に東電が関係者に行った約束に反し、また国連海洋法条約や環境基本法などさまざまな条約・法律に違反し、国際社会とりわけ太平洋諸国からの強い反対にあっているものです。国と東電は、海洋モニタリングによって汚染をチェックするといいますが、もともと、原発事故由来の放射性物質の大半は太平洋に放出されてすでに環境を汚染しているのです。
今日お話ししたかったことをまとめます。
*福島原発事故の被害を忘れるな
*福島原発事故が東電と国の過失によって起きたことを忘れるな
*原子力ムラが事故時に決定的な事実を隠ぺいしたことを忘れるな
*原発GX法案は福島原発事故を忘却した愚かな政策であり、これに賛成するものは次の原発事故を招き寄せた責任を負う
*事故の最も深刻な被害者であるこども甲状腺ガンにり患した若者たちと共に闘おう
*原発汚染処理水を海に放出するな

海渡弁護士には、充実した資料をもとに明快なお話を頂きました。参加者もほぼ90名と、多くの方が終始視聴しておられました。GX法案は通ったとはいえ、自治体レベルや裁判などでできることがまだまだあります、がんばっていきましょう、と最後に全員で確認して講演会を終えました。
資料表紙