「オンライン集会 各地からの報告 原発再稼働反対!核のゴミをどうする?!」報告
(開催日時:2023年11月28日(火) 18時半~20時半)
1. 島根原発2号機を再稼働させない ― 芦原康江さん(さよなら島根原発ネットワーク)
島根原発は海に臨み、山に囲まれた原発で、私はここから11キロのところで暮らしています。福島と同じ沸騰水型の原発で、1989年に運転開始、2021年に新規制基準に合格しており、島根県知事は2022年に再稼働容認を表明し、中国電力は2024年8月に再稼働すると発表しました。
けれども、審査に合格しても審査自体の自然災害評価基準が低く、安全とは言えません。私達は今年3月に、2号機運転差し止め仮処分を広島地裁に申請しました。再稼働予定が迫っているので、以下の3点に争点を絞っての訴訟です。
① 島根原発は巨大地震に耐えられない:敷地から1.3キロの宍道断層を中電は問題なしとしているが、裁判長はこの件に興味を示している。
② 歴史上最大の巨大噴火に対応できない:三瓶山と大山の二つの噴火を中電は想定していないが、これは2012年の原子力関連法令趣旨に反する。
③ 「避難計画」は住民を守らない:原発5キロ圏内は海岸に近く、人家の密集する地域であるが、屋外待避には約3万台の車両が想定され、避難途中の除染スクリーニングには1台1分でさえ、1週間もかかることになるし、避難訓練でもスクリーニングを通過しない車両もあった。避難者がもともと被曝を防げない上に避難先にも被曝は拡散される。屋内避難についても、食糧や水の供給は「今後、支援者を確保する」というだけの無計画。
という状況で、私個人は避難が困難という陳述書を提出して、裁判長はこれを注目しており、当初から中電側に立っている様子ではないことに希望を持っています。
中電はまた、上関に使用済み核燃料貯蔵施設の建設を考えていますが。再処理による核燃料サイクルは破綻しています。私達は島根から核のゴミを他地域に押し付けない、そもそもこれ以上核のゴミを作らないために、まずは島根原発の再稼働を止めてゆきます。
2. 海洋放出されている処理汚染水を止める! ― 武藤類子さん
8月24日からの汚染水放出は年度内4回のうち、3回を終了しました。私は原発から1.5キロの海上に行ってみたのですが、海の様子は変わらず、汚染水は見えないところで流されています。放出終了までには現状で30年、あるいはもっとかかるとも言われています。復興のためと言われていますが、一方で廃炉は進んではいません。汚染水は放出しても高濃度のスラリが残される。そのことも言われていません。汚染水さえ流せればというような風潮を作っています。広報されている汚染水の安全検査も欺瞞的ですし、風評対策には約1,400億円になる多額の税金が注ぎ込まれ、「出前授業」などで若い人を広報に加担させています。
この放出は東電が「関係者の理解を得る」との約束を破って強行したものでもあり、私達はさまざまな行動を行ってきましたし、今でも行っています。国内だけでなく、環太平洋やアメリカの海洋研究所協会ともつながっています。汚染水放出は東電だけにメリットがあるもので、国際的に見ても、他国にはデメリットだけです。
汚染水放出だけでなく、先日、廃炉作業の現場で作業員が汚染水を浴びた事故で、当初は誤った情報を流したり、いるべき責任者は不在だったとのことでした。東電には不信感しかありません。
この汚染水放出に対して、漁業者・漁業関係者・市民で「ALPS処理汚染水差止訴訟」を起こしました。安全性の問題・約束を反故にしたこと・より危険の少ない代替案を検討していない点・国際O社会の反対を押し切っていること・漁業者と市民の生活侵害、等を争点としています。現在原告は363人で、ホームページを作って支援者を募集もしていますので、見てください。
原発からは他にも多くの廃棄物が出ていますが、今は集積したものを拡散する動きが大きくなっています。私達も自分のところにあるのは嫌ではありますが、格のごみは拡散させないことが基本だと考えています。
なお、東電への刑事訴訟は次は最高裁です。厳しい状況ですがご支援をよろしくお願いします。
3. 美しい対馬に核のゴミはいらない ― 小島加津恵さん(核のごみと対馬を考える会)
私の住む対馬は、海に囲まれて山林が9割、海の幸も山の幸も豊かな島です。1974年に原子力船「むつ」の放射線漏れ事故のときに対馬が修理候補地になりましたが、住民の激しい反対運動があり、国は断念しました。その後、1980年代に旧動燃が内密で核廃棄物最終処分場候補地を全国で内密調査していたのを2005年に開示請求し、対馬も候補地とされていることが判明、誘致の動きも出て、2007年には市民有志で「核のゴミと対馬を考える会」を結成し、京都大学の小出先生を招いての講演会などの活動の結果、市議会誘致反対が決議されました。このときの動きは一般市民によるものが中心でした。東日本大震災後、誘致の動きは鎮静化していたのですが、2021年に原子力発電環境機構NUMOが、高レベル放射性廃棄物の最終処分場として対馬に働きかけを始め、誘致に向けての商工会や市議会のレベルでの勉強会や視察が活発化しました。これに対し、今年に入って市民側では「核のごみと対馬を考える会」を再結成、署名、集会、専門家を招いての議会での審査などの活動を展開しました。6月には市民530名が参加しての「ストップ核ごみ決起集会」を開催、その後のデモはむつ闘争以来のものでした。9月にも580名参加の集会を開催、島全体への広報活動も行い、当初は3人であった誘致反対派議員を8人まで増やしました。9月議会の請願審査特別委員会では、誘致派、反対派双方からの主旨説明や専門家招致も含めての審査が行われました。最終的には10対8で誘致推進の請願が採択されましたが、ここまでもってこられたのは運動の成果だと思います。こうした結果、対馬市長は、市民の分断、観光業・水産業の被害、現状では安全性の不安が払拭できない、などから誘致に反対を表明しました。
そもそも利益誘導の形で内密に市民の中に入り込むNUMOのやり方は非常に問題で、対馬の将来についても、どこの自治体でも、もっとオープンな議論が必要だと思います。また、核のごみの処分方法も、埋め捨てではなく、地上で管理する中で放射能除去の技術をもっと追求すべきではないでしょうか。
4. 上関町の中間貯蔵施設問題について ― 木原省治さん
上関は広島から80キロ、伊方原発の30キロ圏内に位置します。1982年に原発の建設計画が公開されましたが、14万㎡という大規模な埋め立てを必要とすることからも漁業者の強い反対をうけ、これは中断しています。ところが2019年以降、使用済み核燃料中間貯蔵施設の上関での建設誘致の動きが出始め、この8月1日に突然に中電と関電が一緒になって、建設の調査を町に申し入れてきました。西町長はこれを受入れ、中電は11月に調査のための森林伐採を行うこととしました。ここは上関原発計画地のすぐ隣ですが、住宅地から見えない場所です。この計画は急に出てきたようですが、2019年ごろから誘致の動きはありました。昨2022年に強引な誘致派の西町長が当選し、動きが加速しました。けれども、この間、上関町長の思惑とはうらはらに、周辺自治体や山口県はこの建設に賛同しないという、建設反対のドーナツ化現象が顕在化し、結局11月の森林伐採は延期となりました。中電は現在、周辺の自治体めぐりをしています。
これ以上、汚染水も高レベル廃棄物も核燃料を増やさない姿勢を作っていくことが必要です。
全国最長の原発反対運動の歴史のある上関は、広島に近く、被爆者もいる町でもあります住民は高齢化しながらも、未来を核の町にしたくないと建設に反対しています。
5. ミニパネルディスカッション
福島みずほさん:司会の福島みずほです。ここまでのみなさまの報告を聞き、各地での頑張りに心から敬意を表します。ここまでで、報告者の方々が語り残されたこと、また、エールの交換などありましたらどうぞ。
武藤類子さん:核のごみの問題は福島の問題でもあります。福島でこれ以上増やさないと言うことはできませんが、芦原さんと同じく、苦渋の選択ではありますが、これ以上拡散させないことが必要です。また、避難については、避難計画があってさえ守られるかは福島の経験からも難しいと思えます。なんとしても、事故が起きる前に止めることがだいじです。そのためにどこでもがんばっておられることが心強いです。連帯して情報公開などしてゆきましょう。
芦原康江さん:福島みずほさんと避難訓練も見学しました。苦労しながら裁判を続けていますが、負けが続く中でも今回の裁判長の動向など一筋の光もあります。とにかく、止めることが私達の最大の責任、止めないとまた福島と同じ事故が起きる、と思い、活動を続けています。
福島みずほさん:そうですね、対馬市長への働きかけ、上関のドーナツ化現象など、地元の頑張りを結集してゆくことが必要だと痛感します。
小島加津恵さん:対馬の運動が最終的に市長の反対につながったことは有難いが、考える会の市民と一緒に、市議会議員の質を上げることをめざしています。賛成派の議員でも選んできたのは市民の責任でもあります。小さい集会を積み重ねながら皆で考えてゆきたいですし、今回の運動で頂いた多額のカンパで、あちこちに呼びかけの看板も立てています。賛成派議員に対してはNUMOの利益誘導ではないかと政治倫理審査請求も起こしています。署名では、3万の人口の島内で8千人以上、島外からも親族の方など1万3千人以上の署名が集まり、住民の8割近い型が反対、と感じています。これからも、この歴史のある島、「対馬をどういう島にしてゆきたいか」を皆と考えてゆきたいと思います。
木原省治さん:上関も歴史があり、郷土愛の強いところです。私は汚染水を処理水と言う方向に持って行くメディアに強い危機感があります。再稼働については、沸騰水型の再稼働のトップに島根は絶対にさせないぞとがんばっています。
福島みずほさん:私自身は「汚染水」、日弁連は「処理汚染水」と言っていますね。
武藤類子さん:きちんと処理されていないものを処理水というのはおかしいし、汚染水と言う人間を風評加害者とする方向、本質をねじまげています。事故後に、県の全てのメディアや電通や県庁が、本来の安心・安全な方向に向かわずに、復興・夢・絆などをポジティブとし、避難・汚染などをネガティブとする傾向を意図的に作っています。
福島みずほさん:今日は現地の思いや課題を伝えてもらい、つながっていこうと痛感しました。では、最後に一言づつメッセージをどうぞ。
芦原康江さん:中電は来年8月の再稼働を目指しています。差し迫ってきているので、集会・署名などに取り組んで呼びかけてゆきますので、ご協力をお願いします。
武藤類子さん:いったん事故が起きれば被害は思いも寄らない方向にどんどん広がります。力を合わせて原発を止めましょう。核のごみも皆で考えてより良い方向を探ってゆきましょう。
小島加津恵さん:リモートで各地の方々とつながれて良かったです。今後も大きな輪を作ってゆきたいと感じました。NUMOのやり方は問題です。核のごみは埋め捨てではなく、管理の下でより良いやり方を探る方向に舵を切っていきたいです。
福島みずほさん:国会でも取り組みます。日本学術会議も地上で管理とていますね。
木原省治さん:中国地方は原発問題オンパレードの地方です。広島に住んでいて思いますが、原爆の被爆者施策も78年経つ今でも莫大な負担を必要としている、放射能被害は非常に厄介な問題です。
福島みずほさん:そうですね、ちょうとニューヨークで開催中の核禁条約締約国会議、日本政府は批准すべきだし、せめてオブザーバー参加くらいはすべきですが、不参加は全く問題です。
今日は皆さんとつながれたことは本当に良かったです。ありがとうございました。
約2時間の充実したリアルな報告と意見交換となりました。100人を超えるお申し込みがあり、参加は70名ほどでしたが、終始続けてご視聴頂きました。地域での地道ながんばりが脱原発の方向につながっていることも改めて感じ、最後に皆の笑顔のエール交換で終了しました。ご参加のみなさま、ありがとうございました。

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